1.人格形成の基礎を培うこと
教育は、子供の望ましい発達を期待し、子供のもつ潜在的な可能性に働き掛け、その
の形成を図る営みである。特に、幼児期の教育は、 にわたる人格形成の基礎を培う重要な役割を担っている。幼児一人一人の潜在的な可能性は、日々の生活の中で出会う
によって開かれ、環境との相互作用を通して具現化されていく。幼児は、環境との相互作用の中で、 を深め、そのことが幼児の心を揺り動かし、次の活動を引き起こす。そうした体験の連なりが幾筋も生まれ、幼児の将来へとつながっていく。そのため、幼稚園では、幼児期にふさわしい生活を展開する中で、幼児の
や生活といった直接的・具体的な を通して、人と関わる力や思考力、感性や表現する力などを育み、人間として、社会と関わる人として生きていくための基礎を培うことが大切である。5.教師の役割
幼稚園における人的環境が果たす役割は極めて大きい。幼稚園の中の人的環境とは、
の教師だけでなく、周りの教師や 全てを指し、それぞれが重要な環境となる。特に、幼稚園教育が を通して行う教育であるという点において、教師の担う役割は大きい。一人一人の幼児に対する理解に基づき、環境を計画的に構成し、幼児の主体的な活動を直接 すると同時に、教師自らも幼児にとって重要な環境の一つであることをまず念頭に置く必要がある。また、幼稚園は、多数の同年代の幼児が
を営む場であり、幼児一人一人が の中で主体的に活動に取り組むことができるよう、教師 が協力して指導にあたることが必要である。①幼児の主体的な活動と教師の役割
幼稚園教育においては、幼児の自発的な活動としての
を中心とした教育を実践することが何よりも大切である。教師が にどう関わるのか、教師の役割の基本を理解することが必要であり、そのために教師には、幼児の自発的な活動としての遊びを生み出すために必要な を整えることが求められる。さらに、教師には、幼児との を十分に築き、幼児と共によりよい教育環境をつくり出していくことも求められている。そのための教師の役割は、教材を工夫し、物的・空間的 を構成する役割と、その環境の下で幼児と適切な をする役割とがある。教材を工夫し、物的・空間的環境を構成する際には、様々な
や用具、素材などを多く用意すれば遊びが豊かになるとは限らないことをまず自覚することである。重要なのは、幼児が遊びに没頭し を味わうことである。そのためには、特に幼児とものとの関わりが重要であることを認識し、幼児の関わり方を予想して物の質や量をどう選択し、 をどう設定するかを考えていくことが重要である。また、ときには幼児自信が興味をもって関わることで教師の予想をこえて教材としての意味が見いだされていくこともあることに留意が必要である。教材を精選していく過程では、幼児理解に基づき、幼児の
や関心がどこにあるのか、幼児同士の関わり合いの状況はどうなのか、教師の願いや指導のねらいは何かなどを考慮することが必要である。また、教師が幼児と適切な関わりをするためには、幼児一人一人の
を的確に把握し、理解することが基本となる。教師には、幼児を理解する者としての役割、共同作業を行う者としての役割など、様々な役割を果たすことが求められるのである。※幼稚園教育要領第一章 第四節 3 指導計画の作成上の留意事項 (7)教師の役割このような教師の役割を果たすために必要なことは、幼稚園教育の
性を磨くことである。その 性とは、幼稚園教育の内容を理解し、これらの役割を教師自らが をもって日々主体的に果たすことである。つまり、幼児一人一人の行動と内面を理解し、心の動きに沿って
を展開することによって心身の発達を促すよう援助することにある。そのためには専門家としての自覚と資質の向上に教師が努めることが求められる。幼児の行動と内面の理解を一層深めるためには、幼児の活動を教師自らの関わり方との関係で振り返ることが必要である。幼児と共に
しながら考え、さらに、幼児が帰った後に1日の生活や行動を 。このことが、翌日からの指導の視点を明確にし、更に充実した教育活動を展開することにつながるのである。これらのことを日々繰り返すことにより、幼稚園教育に対する専門性を高め、自らの能力を向上させていくことができるのである。各幼稚園では、
を通して、幼児と教材との関わりについて理解を深め、遊びが展開し充実していくような豊かな教育環境の に努めることが必要である。②集団生活と教師の役割
教師が幼児一人一人を理解し、心の動きに応じることは、一人一人の幼児の活動を
することや幼児と一対一で関わるようにすることだけを意味するものではない。幼児の主体的な活動は、友達との関わりを通してより充実し、豊かなものとなる。そこで、一人一人の思いや活動をつなぐよう環境を構成し、集団の中で個人のよさが生かされるように、幼児同士が関わり合うことのできる を構成していくことが必要である。集団には、同じものへの興味や関心、あるいは同じ場所にいたことから関わりが生まれる集団や同じ
をもって活動するために集まる集団もあれば、学級のようにあらかじめ教師が した集団もあり、それぞれの集団の中で幼児は多様な経験をする。幼児の発達の特性を踏まえ、それぞれの集団の中で、幼児が主体的に活動し多様な ができるように援助していくことが必要である。幼児期は
が芽生える時期であり、友達との間で物をめぐる対立や思いの相違による葛藤が起こりやすい。幼児は、それらの を通して、相手の気持ちに気づいたり自分の思いを相手にわかってもらうために伝えることの大切さを学んだりしていく。また、自分の感情を抑え、相手のことを 気持ちも学んでいく。この意味で、友達との葛藤が起こることは、幼児の発達にとって大切な学びの機会であるといえる。ここで教師は、幼児一人一人の発達に応じて、相手がどのような気持ちなのか、あるいは自分がどのようにすればよいのかを を通じて考えたり、人として絶対にしてはならないようなことや言ってはならないことがあることに気づいたりするように援助することが大切である。また、集団の生活には があること気付き、その をなぜ守らなければならないかを体験を通して考える機会を与えていくことが重要である。集団における個々の幼児への指導で大切なことは、幼児が単に集団の中で友達と関わっていればそれでよいということではない。重要なのは、幼児一人一人が
的に取り組んでいるかどうかを見極めることである。例えば、集団に入らずに一人でいる幼児については、その幼児の日々の様子をよく見て、 の動きを理解することが大切である。何かに興味をそそられ、一人での活動に没頭していて加わっていないのか、教師から離れるのが不安で参加していないのか、集団に入ろうとしながらも入れないでいるのかなど、状況を し、適切な関わりをその時々にしていくことが必要である。また、一見集団で遊んでいるように見えても、主体的に取り組んでいない幼児がいることから、皆で楽しく遊べないこともある。このようなときには、目的をもって充実した活動が展開できるよう環境を再構成し、 していくことが必要なのである。また、様々な集団がある中で、学級は幼児にとって
意識を培う基本となる集団である。教師は一年間を見通して、幼児の様子をよく見ながら、時期に応じた学級での集団づくりへの援助を行っていかなければならない。例えば、入園当初や学年の初めには、新しい友達や先生の中で不安を抱き、打ち解けられずに緊張しているため、
的に活動できないことが多い。そこで、教師が幼児の心情をよく理解し、受け止め、一人一人のよさを認め、学級として打ち解けた温かい づくりを心掛け、幼児が安心して自己を発揮できるようにしていくことが必要である。また、友達関係がある程度できてくると、決まった友達とだけ遊ぶことも起こってくる。時期を見て、いろいろな友達と関わり合うきっかけとなる環境の構成や
をしていくことも教師の役割である。幼児は、様々な友達との関わりの中で多様な経験をし、よさを相互に
、友達とは違う自分のよさに気付き、自己を形成していく。集団で一つのものを作ったり、それぞれが役割を分担して一つのことを成し遂げたりすることを通して、 意識が更に深まる。皆で協力し合うことの楽しさや責任感、 を感じるようになり、友達にも分かるよう明確に自分の思いを主張したり、ときには自分のやりたいことを我慢して譲ったりすることを学んでいくのである。このような集団での活動を通して、自分たちのもの、自分たちの作品、そして、自分たちの学級という意識が生まれ、幼稚園の中の友達やもの、場所などに をもち、大切にしようとする意識が生まれる。また、幼稚園は、異なる年齢の幼児が共に生活する場である。年齢の異なる幼児間の関わりは、年下の者への
や責任感を培い、また、年上の者の行動への憧れを生み、自分もやってみようとする意欲も生まれてくる。このことからも、年齢の異なる幼児が できるような環境の構成をしていくことも大切である。③教師間の協力体制
幼児一人一人を育てていくためには、教師が
して一人一人の実情を捉えていくことが大切である。幼児の興味や関心は多様であるため、並行して様々な活動をしている幼児を同時に見ていかなければならない。このためには、教師同士が日ごろから を密にすることが必要であり、その結果、幼稚園全体として適切な環境を構成し、援助していくことができるのである。 を密にすることのよさは、教師が相互に様々な幼児に関わり、互いの見方を話し合うことで、 を深められることである。教師は自分と幼児との関係の中で一人一人の幼児を理解している。しかし、同じ幼児について別の教師は違う場面を見ていたり、同じ場でも異なって捉えていたりすることもある。また、幼児自身がそれぞれの教師によって違った関わりの姿を見せていることもある。したがって、日々の を共に振り返ることで、教師が一人では気付かなかったことや自分とは違う捉え方に触れながら、幼稚園の教職員 で一人一人の幼児を育てるという視点に立つことが重要である。このような教師間の日常の協力と話し合いを更に深め、専門性を高め合う場が園内
である。園内 では、日々の保育 を基に多様な視点から振り返り、これからの在り方を話し合っていくことを通して、教師間の共通理解と 体制を築き、教育の充実を図ることができる。教師一人一人のよさを互いに認め合い、教師としての専門性を高めていく機会とすることができる。そのためには、園長が広い視野と幼稚園教育に対する識見に基づいてリーダーシップを発揮し、一人一人の教師が生き生きと日々の教育活動に取り組めるような
をもった幼稚園づくりをすることが求められる。つまり、教師同士が各々の違いを尊重しながら協力し合える開かれた関係をつくりだしていくことが、教師の を高め、幼稚園教育を充実するために大切である。